外国人と日本人との間に生まれた子の国籍及び在留資格

1.日本人と外国人との間に子が生まれたとき、その子は日本国籍を取得できるのでしょうか。

2.この点、国籍法第2条第1号は、子の出生による国籍の取得につき「出生の時に父又は母が日本国民であるとき。」と規定しています。                   以下、(1)母が日本人である場合、(2)父が日本人である場合に分けて考えたいと思います。

3.
(1)母が日本人である場合
 この点、上記国籍法第2条第1号の「父又は母」とは法律上の父母であること、すなわち父又は母と子との間に法律上の親子関係があることを意味すると解釈されているところ、母子関係は分娩の事実があれば、後述する認知なくして法律上の親子関係が認められています。
 したがって、この場合には、父の国籍等の事情に関係なく子は出生により日本国籍を取得することとなります。

(2)父が日本人である場合
 この点、母子関係と異なり、父子関係については、血縁関係があったとしても直ちに法律上の親子関係が認められるわけではありません。したがって、この場合に「出生の時に父又は母が日本国民であるとき。」といえるためには、子が嫡出子(婚姻関係にある夫婦から生まれた子)であるか、父からの認知(法律上の婚姻関係にない父母の間に生まれた子と、その事実上の父又は母との間に法律上の親子関係を成立させる行為)によって父子間に法律上の親子関係が生じる必要があります。以下、場合を分けて検討したいと思います。
①嫡出子である場合
 嫡出子は出生時に法律上の親子関係が認められるとされています(民法第772条参照)。
 したがって、この場合には「出生の時に父又は母が日本国民であるとき。」に該当することから、子は出生により日本国籍を取得することとなります。
②嫡出子ではないが父が胎児認知(未だ胎児である子を認知すること。民法第783条第1項)をした場合
 民法上、認知は出生の時に遡ってその効力を生じるとされています(民法第784条本文)。
 したがって、この場合、胎児認知がなされたときには子の出生時に父子間に法律上の親子関係が生じますので、「出生の時に父又は母が日本国民であるとき。」に該当し、子は日本国籍を取得することになります。
③嫡出子ではない子が出生した後に認知をした場合
 この点、これまで上記の胎児認知との関係で様々な議論がありましたが、国籍法上認知に遡及効はない、すなわち出生後認知はその効力が出生時点まで遡らず、生後認知をした場合は「出生の時に父又は母が日本国民であるとき。」に該当しないと解されてきました(最高裁平成14年11月22日判決等)。また、そのような判断のもと、嫡出子ではない子に対する出生後認知の場合については、原則として子は日本国籍を取得できないとされてきました。
 しかし、平成20年6月4日、最高裁は、「日本国民である父と日本国民でない母との間に出生した後に父から認知された子について,父母の婚姻により嫡出子たる身分を取得した(準正のあった)場合に限り日本国籍の取得を認めていることによって,認知されたにとどまる子と準正のあった子の間に日本国籍の取得に関する区別を生じさせていることは,憲法第14条に違反する」との判断を示しました。
 そして、上記最高裁の判断を受けて、平成20年12月12日、国籍法が改正(平成21年1月1日施行)され、出生後に日本人に認知されていれば、父母が結婚していない場合にも届出によって日本の国籍を取得することができるようになりました(国籍法第3条第1項)。
 したがって、このような場合にも、子は日本国籍を取得することとなります。

4.以上を踏まえたうえで、日本国籍を取得できない子は、「外国人」(出入国管理及び難民認定法第22条の2第2項)となってしまいます。
 したがって、子は出生の日から30日以内に在留資格取得許可申請を地方入国管理局に対して行ない、在留資格を取得しなければなりません(出入国管理及び難民認定法第22条の2第2項、出入国管理及び難民認定法施行規則第24条第1項ないし第3項)。
 この場合に子に認められ得る在留資格は、親の在留資格の種類によっても異なりますが、概ね「日本人の配偶者等」「永住者の配偶者等」「家族滞在」「定住者」のいずれかになると考えられます。
                          

187号 ドンと来い、大不況!

1.皆様、明けましておめでとうございます。
 今回(187号)、新春第一号は、「ドンと来い、大不況!」です。
 不況の時勢。不安、絶望の淵におられる方も多々おられるでしょう。
しかし、大不況だからこそ、「何とか家族を守ろう!」「技術を身につけよう!」「資格を取ろう!」「お客様に更に丁重に接しよう。」などと、生き抜くために一所懸命になる方が多いと思います。
 不況の時代には、そのような良い意味もありますし、時季がくれば、みんなどうせ死んでしまい、いずれは誰の記憶にも残らなくなってしまうのですから、今の一刻一刻を大切に、前向きに全力で生きよう! と私は思います。

186号 今ここにいる奇跡

今回(186号)は、「今ここにいる奇跡」です。
 「今の時点」から、これまでの人生を振り返ってみましょう。
 まず、受精時。白血球などの攻撃をかわし、三億の中からたった一つ生き延びられた精子。なんと幸運だったのでしょうか。
 やがて受精、出産。その際には、流産・死産の危機をも乗り越えました。
 幼稚園、小学校、中学校、高校、(大学)、(就職)・・・。
 この間、病気、交通事故、溺れ、親からの虐待、いじめ、金欠、身内の病・死、・・・いろいろな危機があったことでしょう。
 しかし、「今ここに存在している」という厳然たる事実は、これらの全ての問題を切り抜けたことの証拠です。
 一方、それぞれの危機のときには何かを学んだはずです。従って、危機は、トータルで考えれば、得だったということが少なくないはずです。
 この事実に想いを馳せるとき、幸運の女神は未だ自分の側にいること、そして、自分自身の中には崇高な向上力があることに気付かれることでしょう。
  あなたの強運に乾杯!

185号 幸せの円周

1.今回(185号)は、「幸せの円周」です。
 御自身の周りに円をイメージし、恵まれていることを円上に乗せてゆきます(健康であること、家庭が円満であること、適度な貯金があること、職場が平和なこと、子供が真面目なこと、・・・・)。
 忘れていた「恵まれている点」が如何に多いか分かってくると思います。やがて、ココロが明るくなってくるでしょう。
 万が一、ココロがそれでも回復しないなら、逆に、他の人になったものとして、不運な出来事(飢餓、激痛、寝たきり、破産、殺害される可能性、アウシュビッツへの収容、別離・・・・)をイメージして、円周に並べます。
 その上で、どちらの円の中心にいたいかを考えてみます。

当番弁護(万引き)

 スーパーマーケットで万引きをして警備員に声をかけられた場合、どうすればよいか?
 先日、スーパーマーケットで万引きをして警備員に声をかけられ万引きの事実を否認し、警察に逮捕された方(以下、「本件被疑者」といいます。)から、当番弁護の依頼がありました。
 当番弁護とは、身体拘束をされている被疑者・被告人や家族等から、弁護士会に接見の依頼があった場合に、当番弁護士が1回だけ無料で接見に赴き、被疑者・被告人の相談に応じる制度です。
 警察により逮捕されると警察官による取調べがあり、48時間以内に検察庁に事件が送られます。これを送検といいます。
 検察官は、それから24時間以内に簡単な取調べをしたうえで、勾留の必要がある場合は、裁判所に勾留請求をします。
 勾留の請求がされると、裁判官が、勾留質問をし、勾留するかどうかを決めます。
 勾留が認められると、原則として勾留請求された日から10日間以内留置されます。その間に捜査が終わらない場合は、さらに10日以内延長されることがあります。
 万引きとは、刑法235条の窃盗罪にあたり、法定刑は10年以下の懲役又は50万円以下の罰金です。
 当然ながら、万引きをしてはいけません。
 しかし、万が一、魔が差して万引きをして警備員に声をかけられた場合、逮捕されたくないのであれば、素直に万引きの事実を認めるのが得策であると考えます。
 仮に、万引きの事実を否認して警察が呼ばれ、警察にも否認した場合には、警察署への任意同行を求められ、その後逮捕されてしまうケースが多いものと思われます。
 本件で被害にあったスーパーマーケットの店長は、本件被疑者が素直に万引きの事実を認めていれば、警察を呼ぶことはなかったと仰っていました。また、仮に警察が呼ばれたとしても警察に対して万引きの事実を認めれば、他の事情にもよりますが逮捕される可能性は低かったのではないでしょうか。
 本件被疑者は職場の電話番号などがわからなかったため、職場に休む旨の連絡ができず、無断欠勤となってしまいました。
 スーパーマーケットとの示談は、上述のとおり当該スーパーマーケットでは万引きをしても警察を呼ぶことは少なく、本件では警察が呼ばれるほど悪質であったと考えられるから、本件で被害弁償や示談を受けることはできないとして、できませんでした。
 本件被疑者は、結局、勾留満期に処分保留で釈放されましたが、職場には復帰できたのでしょうか。
 いずれにしても、万引きをしてはいけませんが、仮にしてしまった場合には、万引きの事実を認めた方が、事実上逮捕されない可能性は高いといえるでしょう。