米川耕一法律事務所

苦難と耐性     
      2001年6月16日 代表弁護士 米川 耕一

 今回は、「苦難と耐性」です。今から7年程前、私はカリブ海に行く機会がありましたが、そこでひとときの観光ということで勧められたのがグラスボートに乗っての周遊でした。
 私のイメージは船底のガラスを通してのんびりと海中の魚を観察するというものでした。ところが、案内されたボートは15人乗りのオンボロ高速艇で、船底のガラスには大きなヒビが入っていました。

 予想とは異なりましたがせっかく予約をしておいたものなので、船に乗り込みました。人数は私を含めて2人の日本人と13人のアメリカ人の合計15人。
 船は外海に向かって発進しました。高速艇なので最初はそれなりに快適ではありましたが、やがて、岸が見えなくなり、汽船などの他の船も全て見えなくなり、一方、カリブ海特有の高波に船が見舞われ、大揺れに揺れ、海に振り落とされそうになってくると全員が「転覆、溺死」という結末を想像するようになりました。
 恐怖から意を決したかのようにアメリカ人の一人が「港に戻るかどうか決を採りたい。」と発言し、挙手をすることになりました。結果は8対7でこのまま進行(「決死の突撃」というほうが正確でしょう。)を続けることになりました。 大荒れの中を目的の海域までやっとたどり着くと海底には沈没船の残骸がありました。鮫の影もちらほら見えました。
 改めて恐怖を覚え、大急ぎで総員退却。

 生きた心地のしない恐怖の体験でしたが、その後この体験は私自身に興味深い効果を及ぼしました。
 群馬県の山中で日航機が墜落してから、それまで飛行機好きであった私は飛行機恐怖症に近い状態になってしまい、いかにしてそれを克服するかを研究しましたが、決定打はありませんでした。
 ところが、カリブ海の恐怖の体験をしてからというもの、どんなに飛行機が揺れようが全く大丈夫となってしまい、逆に揺れないと、「もっと揺れた方が楽しいのに。」とすら思うようになってしまいました。
 カリブ海での体験があまりに強烈だったので、そこで揺れに対する耐性ができてしまい、少々のことでは動揺しなくなってしまったわけです。

 実は、このような耐性ができることは会社経営に於いてもいえることで、ある程度強烈な経営上の苦労をしておくと、それを乗り越えたことで耐性が出来、その後の苦労を耐えられるようになるばかりか、平々凡々の日常では物足りないくらいになります。
 
 現在苦労があっても、将来振り返ると必ずや「耐性作りのよいきっかけであった。」と思う日が来ると信じて、与えられた日々の仕事に全力を尽くすことが肝要であるとつくづく思います。
                   以 上















           



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