インターネットのホームページなどで他のページとリンクを貼るには事前にリンク先の了解を得ておかなければ著作権侵害といわれてしまうのでしょうか?
弁護士永島賢也 2001年2月26日
現在、インターネットの代名詞にまで成長したWWWは、1989年ころ、学術論文や資料の管理のため、ハイパーテキストによる分散型のデータベースシステムとして産声をあげました(CERN・TIm Berners-Lee)。
それはHTTPという通信規約を使用してURLを指定することで分散した各WWWサーバの情報を閲覧できるというものでした。
ハイパーテキストは、文字、画像、音声まで関連づけられるためその表現力は高く、また、ハイパーテキストによって記述された情報は、他の情報に対しても関連づけを行うことができるため、広範な網の目(ネット)を作って行くことが可能になります。
ハイパーテキストがもともと持っていたこの「高い表現力」と「関連づけ」という性質が、wwwひいてはインターネットの利用を今日にいたるまでに発展させてきたといっても過言ではないかもしれません。
一般的に、いわゆる「
インターネット
」を利用するといわれる場合、まず、URLを指定します。
たとえば、このサイトのホームのURLは、
backnumber1/
です。
このhttpというのは、前述のハイパーテキストの通信規約を表現しています。
H
yper
T
ext
T
ransfer
P
rotocol の各頭文字です。wwwはwwwサーバを示します。
ということは、かようなURLを利用しているということ自体、ハイパーテキストを利用し、その属性として「関連づけ」という性質を利用することを了承しているともいえます。
もし、いわゆる「
インターネット
」の持っている関連づけという性質を利用したくないのであれば(閲覧者の範囲を特定したいのであれば)、IDとパスワードを要求することにより、それを実現することも可能です。
そうだとすると、ID・パスワードを利用することなく開設しているページは、いわゆる「
インターネット
」において関連づけを行うこと(リンクをはること)自体一般的に了承しているといえ、リンクを貼ることに対して事前に個別的承諾を受けることは原則として不要と考えられます(これは、当事務所に対してもよくある法律相談です)。
関連づけ(リンク)を著作権の侵害の有無という観点から見れば、それが「複製」にあたるかどうかがひとつの問題になります。
この点、リンク元はリンク先の著作物をいったんリンク元に写し取って表現しているわけではありませんので、これをもって「複製」というのは困難だと思います。リンク元は、そのHTMLで記述されたハイパーテキストの一部にリンク先のURLを記載したにすぎないからです(URL自体を著作物であるということは困難です。通常、題号、タイトル、題名自体には著作物性がないと解釈されています)。
もっとも、関連づけの仕方にも多様性があります。たとえば、名誉毀損といえる態様でのリンクは著作権法の問題にとどまらず不法行為として責任を負わなければならなくなるでしょう。
また、「フレーム
内
リンク」についても問題があります。
この問題では、米国で争われたトータルニュース事件が有名です(
totalnews
)(The Washington Post Co.v.TotalNews Inc.,)。
要するに、トータルニュースというページ内の一部にたとえばワシントンポスト紙の記事が映し出されてしまう形式のリンクがありました(この事件はその後和解が成立しました)。
トータルニュースの閲覧者が、たとえばFOXNewsやCBSニュースの記事を要求すると、ウインドウの中に当該ニュースのページが映し出されるというものです。映し出されるページは全体の半分以上のスペースを占めていたようです。
フレームを理解している閲覧者であれば、ページの中身だけが他のサイトからやってきて映し出されていることがわかるでしょう。そして、それ以外の部分がトータルニュースというページで、トータルニュースが集めてきた広告が掲載されていると理解するでしょう。それでも、URLは元のままですから、あたかもリンク元のページの内容を表示しているように見えてしまいます。
つまり、フレーム内リンクは、情報内容はリンク先のものを表示しているにもかかわらず、URLはリンク元を表示しつづけていることに問題があります。
この点、裁判にまで発展したケースもありますが、結局和解で終了し、判決に至ったケースは見あたらないようです。
思うに(この分野は変動が激しいので、少なくとも今の時点では)、同一性保持権(著作権法20条)の侵害と構成することが可能ではないか、と考えています。同条項には、著作者は、その著作物及びその題号の同一性を保持する権利を有し、その意に反してこれらの変更、切除その他の改変を受けないものとする、と定められています。リンク元のURLでリンク先のコンテンツを表示しているという点に着目する法律構成です。とりわけ、インラインフレームについては、その使用方法によって翻案権侵害のおそれが高まると考えます。
また、同法113条5項は、「著作者の名誉又は声望を害する方法によりその著作物を利用する行為は、その著作者人格権を侵害する行為とみなす」と定められています。このみなし規定によって、いわば新たに著作者に名誉声望を保持する権利が認められたともいえるでしょう(20条の規定は、その意に反する改変と定め、113条5項は名誉声望を害する利用行為と定めており、若干範囲を異にするようです)。
本条項は、たとえば、著作者が希望しないと思われる場所に著作物を設置するとか、芸術的な作品を単なる平凡な広告物と同じ取り扱いで利用されたりすることをやめさせるため、著作者が、その創作意図からはずれた著作物の利用を防ぐ権利をもつというものといえます。
また、視点を変えまして、ウェブデザインという観点から考えてもフレームは利用しにくい部分があると思います。というのは、URLとその内容とが切り離されてしまうからです。フレームを利用すると、URLはフレームセットの初期設定を表示するものにすぎなくなってしまいます。少なくとも、現時点では、次のような問題があるように思います。
たとえば、友人に対して、内容を確認して欲しいページのURLをメールで送信したとします。しかし、フレームが利用されているとその友人は必ずしも自分と同じ情報をみているとは限りません。URLとそのコンテンツには同一性が失われているからです。
また、フレームを利用している場合、ページをプリントアウトする際にも不都合が生じやすくなっているようです。スクロールが必要なフレームを上手にプリントアウトするのは難しいようです。
ペーパーレス化などといわれて久しいですが、私は、紙への印刷という方法は、時代遅れの保存方法ではなく、新たにその必要性が再認識された有効な手段といった印象をもっています。
というのは、webページに関して言えば、前に見たページがその後移動されていたり、前に見たページが見つけられなくなったりすることはよくあることなので、念のため、プリントアウトしておけば、たとえ、サーバがダウンしていても読むことが可能となります。また、長文は、PCのディスプレイよりも紙に印刷した方が読みやすいといえます。
結局、リンクは原則として自由といえますが、その方法には多様性がありますので、著作権法以外も視野にいれて個別具体的に検討してゆかなければならない問題だと思います。
↓インラインフレームの例です。
インラインフレームを駆使し、既存のウェブページに新たなる創作性を付加し二次的著作物を作成する場合、原著作物の著作者の許諾が必要になります(著作権法27条)。
この部分はIFRAME対応のブラウザで見てください。
この部分はIFRAME対応のブラウザで見てください。
この部分はIFRAME対応のブラウザで見てください。
フレームリンク
< マルチメディアと著作権(半田正夫教授)
CRIC
(社団法人著作権情報センター)
HTMLのVERSION4.0からは、「インラインフレーム」と呼ばれる新たなタイプのフレームを取り扱うことができるようになりました。
インラインフレームとは、他のフレームやウィンドウに接していないフレームのことで、あたかも、ページの中に画像を張り付けるかのようにフレームを作ることができます。
その中に他のウェブページを表示することができ、フレーム内におさまらない場合でもスクロールして見ることができます。
インラインフレーム
関連リンク
・NIKKEI NET