カラオケ装置リース会社とJASRAC(社団法人日本音楽著作権協会)との判決 速報


弁護士 永島賢也 2001年3月3日   

 平成13年3月2日著作権侵害差止等請求事件に関し、最高裁にて判決がなされました。

 内容を要約すると次のとおりです。
 
 いわゆるカラオケ装置(レーザーディスク用・通信用)のリース行う業社は、リース契約の相手方(例えばパブ店等)に対し、当該音楽著作物の著作権者との間で著作物使用許諾契約(ライセンス契約)を締結すべきことを告知したうえで納入したというだけでは不充分であり、更に加えて、その相手方が実際にライセンス契約を締結しているか、又は、その申し込みを行ったことまで確認した上でなければカラオケ装置を引き渡すべきでない、という注意義務を負っているというものです。
 
 要するに、注意義務が厳しくなったのです。
 
 東京高裁と最高裁との間で見解がわかれたのは、次の点といえます。

 リース業社は、カラオケ装置の引渡に先立って、その相手方がライセンス契約締結の申し込みを行ったことを確認すべきかどうか、です。

 東京高裁は、先立つ確認義務を否定しました。最高裁は先立つ確認義務を肯定しました。

 東京高裁は、時期を分けて判断しています。つまり、当該リース業社は、その店が平成7年6月9日以降に初めてカラオケ装置の使用禁止等の仮処分命令を受けたことを知り、ライセンス契約を締結していないことを認識しましたが、その後、更に、その店から単に迷惑をかけない旨の誓約を受けたのみで、同年9月9日に更なるリース契約を締結してカラオケ装置を引き渡しています。
 そこで、6月9日の前と以後とに分けて、6月8日までの過失を否定し、6月9日以降の過失を肯定しました。
 
 最高裁は、6月9日の前についてもその過失を認め、損害額の算定は、最初にリース契約を締結し引き渡した同3年9月30日から計算しています。

 今回の判決の以前には、大阪高裁平成6年3月17日判決があり、ライセンス契約を締結する旨伝え、その後も契約を締結するよう促し、どうしても応じない場合は装置を引き揚げるべき注意義務があるとしていました。
 上記東京高裁の判断も、かかる大阪高裁の判断の延長線上にあると考えることができると思います。
 この場合、リース業社は、カラオケ装置の納入に際し、口頭又は書面によってライセンスを受けるように促し、その後もライセンスを受けていないようであればそれを促し、それでも応じない場合は装置を持ち帰らなければならないということです。
 すなわち、期間的に幅のある継続的な注意義務を負うことになります。いわば「線」です。
 
 他方、上記最高裁判決の場合、カラオケ装置の引渡に際して、既にライセンス契約をすませているか、少なくともその申し込みを行っていること確認した上でなければ注意義務を果たしたことにならないことになります。いわば「点」です。

 かように「線」の注意義務から「点」の注意義務にかわってきたともいえるでしょう。

 もっとも、リース業社の経済的なインセンティブに合致するのは「点」の方だといえるかもしれません。

 JASRAC(の担当者)にとってカラオケに関する使用料の回収業務はかなりきつい仕事だったようでしたし、また、店側もあらかじめいろいろ事情をわかったうえでカラオケ装置を受け取ることができるので誤解も少なくなりますし、今後良い方向に向かっていってほしいと思います。









           
 
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