法律研究

2009/01/28 法律研究

外国人と日本人との間に生まれた子の国籍及び在留資格

1.日本人と外国人との間に子が生まれたとき、その子は日本国籍を取得できるのでしょうか。

2.この点、国籍法第2条第1号は、子の出生による国籍の取得につき「出生の時に父又は母が日本国民であるとき。」と規定しています。                   以下、(1)母が日本人である場合、(2)父が日本人である場合に分けて考えたいと思います。

3.
(1)母が日本人である場合
 この点、上記国籍法第2条第1号の「父又は母」とは法律上の父母であること、すなわち父又は母と子との間に法律上の親子関係があることを意味すると解釈されているところ、母子関係は分娩の事実があれば、後述する認知なくして法律上の親子関係が認められています。
 したがって、この場合には、父の国籍等の事情に関係なく子は出生により日本国籍を取得することとなります。

(2)父が日本人である場合
 この点、母子関係と異なり、父子関係については、血縁関係があったとしても直ちに法律上の親子関係が認められるわけではありません。したがって、この場合に「出生の時に父又は母が日本国民であるとき。」といえるためには、子が嫡出子(婚姻関係にある夫婦から生まれた子)であるか、父からの認知(法律上の婚姻関係にない父母の間に生まれた子と、その事実上の父又は母との間に法律上の親子関係を成立させる行為)によって父子間に法律上の親子関係が生じる必要があります。以下、場合を分けて検討したいと思います。
①嫡出子である場合
 嫡出子は出生時に法律上の親子関係が認められるとされています(民法第772条参照)。
 したがって、この場合には「出生の時に父又は母が日本国民であるとき。」に該当することから、子は出生により日本国籍を取得することとなります。
②嫡出子ではないが父が胎児認知(未だ胎児である子を認知すること。民法第783条第1項)をした場合
 民法上、認知は出生の時に遡ってその効力を生じるとされています(民法第784条本文)。
 したがって、この場合、胎児認知がなされたときには子の出生時に父子間に法律上の親子関係が生じますので、「出生の時に父又は母が日本国民であるとき。」に該当し、子は日本国籍を取得することになります。
③嫡出子ではない子が出生した後に認知をした場合
 この点、これまで上記の胎児認知との関係で様々な議論がありましたが、国籍法上認知に遡及効はない、すなわち出生後認知はその効力が出生時点まで遡らず、生後認知をした場合は「出生の時に父又は母が日本国民であるとき。」に該当しないと解されてきました(最高裁平成14年11月22日判決等)。また、そのような判断のもと、嫡出子ではない子に対する出生後認知の場合については、原則として子は日本国籍を取得できないとされてきました。
 しかし、平成20年6月4日、最高裁は、「日本国民である父と日本国民でない母との間に出生した後に父から認知された子について,父母の婚姻により嫡出子たる身分を取得した(準正のあった)場合に限り日本国籍の取得を認めていることによって,認知されたにとどまる子と準正のあった子の間に日本国籍の取得に関する区別を生じさせていることは,憲法第14条に違反する」との判断を示しました。
 そして、上記最高裁の判断を受けて、平成20年12月12日、国籍法が改正(平成21年1月1日施行)され、出生後に日本人に認知されていれば、父母が結婚していない場合にも届出によって日本の国籍を取得することができるようになりました(国籍法第3条第1項)。
 したがって、このような場合にも、子は日本国籍を取得することとなります。

4.以上を踏まえたうえで、日本国籍を取得できない子は、「外国人」(出入国管理及び難民認定法第22条の2第2項)となってしまいます。
 したがって、子は出生の日から30日以内に在留資格取得許可申請を地方入国管理局に対して行ない、在留資格を取得しなければなりません(出入国管理及び難民認定法第22条の2第2項、出入国管理及び難民認定法施行規則第24条第1項ないし第3項)。
 この場合に子に認められ得る在留資格は、親の在留資格の種類によっても異なりますが、概ね「日本人の配偶者等」「永住者の配偶者等」「家族滞在」「定住者」のいずれかになると考えられます。

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