米川耕一法律事務所
弁護士米川耕一 2001年7月10日
1. 今回は、「伝聞の危うさ」です。昔からのゲームで伝言ゲームというものがあります。
多人数が二組に分かれ、同じ内容のメッセージを順次出来る限り正確に伝えてゆくというもので
す。
このゲームからもわかるように参加者が多いほどオリジナルのメッセージが歪曲されて伝えられてしまいます。
ゲームなら笑っていられますが、これが仕事に関することになると由々しき問題となってしまいますが、実は伝聞によって仕事上誤解を生ずることは大変多いのです。
2. 例を挙げてみましょう。
(例 1)不在中に記載する「電話メモ」に「○○さんから電話:弁護士費用が高い、とのこと」とあったので、メモの表現からして、さぞかし御不満だろうと思いながら電話をしてみると、手元不如意なので少し弁護士費用をお安くしていただけませんか、との丁重なお願いだった。
(例 2)当方の秘書に打ち合わせの時刻と場所を先方に伝えるように言ったところ、先方の秘書が誤って伝えて、打ち合わせが出来なくなり、気まずくなってしまった。
3. このような誤解が生ずる原因は、情報を全て正確には記憶することができないという生理的な問題と情報を伝達者が判断し、色づけをしてしまうことにあります。
4. 後者について敷衍しますと、話者の声色が暗い場合に、「怒っているようだ。」という色づけが勝手に情報に加えられ、「お怒りでした。」ということになってしまう例が挙げられます。
話者は風邪をひいていて気分がすぐれなかっただけかもしれないのです。
5. 自分の意思を正確に伝えようとするならば、伝聞を避けて直接話すことが重要であることはあきらかですが、多忙な経営者はなかなかできないものです。
6. そこで、伝聞でありながら、出来る限り正確に意思を伝える方法をお伝えします。
(1)伝えたい情報に重要度をつけ、重要度の高いものは必ず自分で連絡することを習慣とする。
(2)伝聞となるときは、メモなどに用件を書いて秘書に渡すようにする。
(3)先方が秘書の場合は、「とても大切なことですので、よろしく。」とか「お名前を伺ってよろしいですか。」などとその用件が大切であるという印象づけをする。
(4)内容を二回繰り返して伝える。
(5)判断的表現を削除して、客観的情報だけを聞くようにする。
(6)メッセージを聞き取るときは、助詞を含め、出来る限り、ありのままをメモしてもらうように秘書に言っておく。
7. 翻訳の世界では、中国語を日本語にし、さらに英語にするなど、翻訳を二回すると死んでいた人間が生き返ると言います。
無用な誤解や紛争のもととなりかねない伝聞を極力避けて、円満な人間関係を保ちたいものです。
以上
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