観 察 眼   

2002年6月26日 代表弁護士 米川 耕一


1. 今回は、「観察眼」です。


 私はカラスが嫌いではなく、その頭のよさにはいつも感心していたのですが、早朝ウォーキングをしているときに脅かされたことがあります。

 1回目は背後から頭に乗られ、2回目は側に来て「ギャー、ギャー」と大声で威嚇されました。

そのときは身の危険を感じただけでしたが、後で冷静に考えてみると、頭に嘴や爪による傷は全くない、2回とも同じ場所を通った時に威嚇されている、6月という子育ての時期の出来事であるといったことから、その場所を通らなければ危険はないということがわかり、いわばカラスの気持ちがわかってからは、安心してウォーキングを続けられるようになりました。

他方、そのような分析をせずにいたら、徒にカラスに怯えなければならなかったでしょう。



2. 裁判においても、離婚案件のクライアントが、例えば、相手方は暴力的ですと言ったとしても、クライアントの態度が煮え切らないことに業を煮やして相手方が暴言を吐いているにすぎず、双方の理解が深まれば相手方は暴言を吐いたりしなくなることが少なくありません。

一方的にクライアントの話を鵜呑みにしていては正確な判断はできず、その意味でクライアントの性格、行動様式なども観察して事案の本質も見る努力が必要になりますし、その努力は結局はクライアントの為にもなるものです。

会社経営においても、観察眼を養い、苦難を事前に察して、これを免れることは経営の全般に渡って必須のことなのですが、その能力を高めるにはそれなりの技術を磨かなければなりません。



3.以下は、観察眼を磨く方法の一例です。

 (1)過去の例を検討する。

 例えばかつて従業員がストレス過剰から辞めていった場合、その前の顔色、声の調子、ミスの頻度、欠勤状況などを思い出してみるのです。その人たちに共通の現象(例えば腹痛を訴えているなど)があるはずです。現在、それに当てはまる人がいれば、経営者は、声をかけて悩みを聞いてあげなければなりません。

 (2)不自然なことがないか考える。

 例えば、わざわざ人のいないところで、携帯から電話をかけている、一方でやけに顔色がつやつやしてきた等々が重なると結婚が近い、従って、万が一の退社に備えて次の人材を募集しようとなるわけです。

 (3)一人だけの静かな時間を持つ。

 外界の雑音から離れる時間を持つようにします。公園や神社を散歩したり、黙想したりします。そのようなときに普段気にとめていなかったことがフッと浮かび上がることがあります。

               以 上


(次)


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