DIPファイナンス
DIPファイナンス
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弁護士 永島賢也 2002年1月15日
平成14年1月10日、日本経済新聞の記事によると、第一勧業銀行は、「DIPファイナンス」を実施するとのことです。
同行にとって最初のケースだそうです。DIPファイナンスを手がけるのは富士銀行に次いで2行目にな
るとのことです。
DIPとは、
Debtor in Possession
の頭文字をとったものです。
直訳すると、「
資産占有債務者
」とでも訳すべきところのものですが、そのように訳してみても、いっこうに何のことかわからないと思います。
米国連邦倒産法第11章(しばしば、単に「チャプターイレブン」とだけ呼ばれます。)は、再建型の手続について定めています。
他方、清算型の手続は、同法第7章に定めがあります。
前者はReorganization、後者は、Liquidationといいます。
チャプターイレブンの特長のひとつは、「DIP」型の手続であることです。
すなわち、債務者みずから、手続開始後も業務を遂行し、その財産を管理処分します。
実際、特殊な事情がないかぎり、管財人(Trustee)や調査委員(Examiner)が選任されることはないようです。
もっとも、債務者みずからが、業務を遂行し、財産を管理処分するといっても、それは、債権者等のためにその地位が認められているのであって(機関性)、いわば、債務者みずから管財人となって再建をめざすものといえます(なお、民事再生法38条2項)。
したがって、DIPとは、「旧経営陣が引き続き経営を行う」というところに重点があるのではなく、管財人が選任されずに再建をめざす手続であるところに重要な意味があります。
かかる地位にある債務者のことをDIPと呼ぶ場合があります。そうすると、ここでは、DIPを「再建中の企業(債務者)」と訳した方がよいかもしれません。
このように、DIPファイナンスとは、端的に言えば、再建企業向け融資のことです。
このDIPファイナンスは(民事再生法の適用が申し立てられた場合)、そのファイナンスの時期によって、大きくふたつに分けることができます。
すなわち、再生計画認可決定より前のもの(認可前型)と以後(認可後型)のものです。
なお、認可後型について述べると、東京地裁における民事再生法の運用ではほとんどのケースに監督委員が選任されます(公認会計士の補助を受けて財務状況を開示する手続が定着しつつあるともいえます)。
そうすると、認可決定後3年経過後に申立または裁判所の職権で、再生手続の終結決定がなされますので(188条2項)、おおよそ認可後3年間の融資に限ってDIPファイナンスと呼ぶことも可能かと思われます。
また、認可後に、再建企業の営業譲渡・事業買収等のためにその第三者企業に対して融資することも(これをDIPファイナンスと呼ぶかどうかは別として)ありうるところです。
更に、このDIPファイナンスには、申立前からの貸し手が当該再建企業から少しでも確実な回収を行うための融資と、全く、新規の貸し手が積極的に再建企業に対して行う融資とに区別することができます(Fresh型)。
上記新聞記事によると、第一勧銀は、当該再生企業に対する融資実績は全くなかったそうですので、いわゆるFresh型に属します。
専ら、事業の採算性に目を向けた融資であって、相当な判断力が必要な融資であると思います。
以 上
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