少額管財
法律研究室 (少額管財)
米川耕一法律事務所
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弁護士 永島賢也 2001年9月7日
少額管財とは
少額管財手続とは、管財手続でありながら同時廃止事件と同様のスケジュールで免責許可の決定まで進行させる手続です。
少額管財手続の「少額」とは、最低予納金が「少額」という意味で、負債額が少額であるとか、債権者の数が少ないなどとは関係なく、財団の規模に制限があるものでもありません。
少額管財手続は、東京地方裁判所民事20部と在京三弁護士会の協力により平成11年4月から運用が開始されました。
小破産?
我が国の破産法には小破産という制度がありますが(破産法358条)、少額管財手続はそれとも異なります。
小破産制度は、裁判所が破産財団の額が100万円に充たないと認めるとき破産宣告と同時に小破産の決定を出すものです。
小破産は、財団の規模が小さい場合に、手続を簡略化して費用を節約し、かつ、迅速に手続を進行させ、関係人の利益を図る目的を有しています。
しかし、現在においては、既に100万円という金額が低額すぎる金額となってしまっており、また、いうところの簡易な手続は通常の破産手続でも行われうるという事情ともあいまって、あまり利用されてはいないようです。
むしろ、財団が100万円以下というのであれば破産廃止も視野にはいってくる領域といえます。
破産廃止とは?
では、破産廃止とは何でしょうか?
裁判所は、破産財団が破産手続の費用をも償うに足りないと認めたときは、必ず破産宣告と同時に破産廃止決定をします(同法145条)。
これを同時破産廃止(同時廃止)と呼びます。同時廃止の場合、破産管財人は選任されません(同法142条のいわゆる同時処分はなされません)。
この同時廃止が、破産に関する実務の重要な問題点となっています。
破産管財人の調査によって初めて財団が真に乏しいかどうかが判明するともいいうるのに、同時廃止ではその管財人による調査なくして破産手続が解止してしまうからです。
また、免責手続においても管財人の報告(同法366条の5)は重要な意味をもっています。
もし、同時廃止すべき事件と、管財人を選任すべき事件との中間に属する領域にある事件が、本来、管財人を選任して調査する必要があるにもかかわらず、同時廃止として処理されるとすると、かえって債権者や債務者に不利な運用になってしまうおそれもあります。
過度な同時廃止の運用が行われないようにするためには、かかる中間領域ともいいうる事件について、低廉な予納金にて管財手続を進める工夫が必要になってきます。
それが、少額管財手続です。
予納金
では、予納金とは何でしょうか?
破産法は、破産を申し立てる場合、一時的に手続費用を償う財源を申立人債権者に求めます(法139条)。
これが予納金と呼ばれるものです。予納金は手続費用を支弁するものですから、一律ではなく、予想される財団の規模などの要素を総合考慮して裁判所がそれぞれの事件について定めるものです。
最終的には財団から優先的に償還されるものです。
このように、破産法は、債権者申立の場合予納金の納付を求め、債務者(自己破産・準自己破産)の申立の場合には要求していません。
これは、前者の場合、いわば債権者のために破産手続が行われているのに対し、後者の場合、債務者は破産手続から何ら利益を受けるのではないと考えられているからと説明できます。
しかしながら、自己破産の場合も免責を得るという債務者の利益のため破産手続が行われうるのですから、かような区別は現在の社会状況に対応していないようにも思われます。
そこで、実務では、自己破産の場合も予納金の納付を求める運用となっております。
ところで、現在(平成13年8月)、少額管財事件は、全破産申立件数のうち30%を占めるところまで増加しているとのことです。
また、法人破産に関しては、その申立件数のうち法人少額管財手続の占める割合は70%を超えているとのことです。
米川耕一法律事務所
03−3595−1189
現在、少額管財事件の「管財人」による債権届出書の処理等が議論されております。少額管財事件に限って実施に移される予定です。
債権届出は裁判所に対してなされることになっていますので(破産法228条)、管財人をどのような位置づけにするか、時効中断(民法152条参照)をどうするか、裁判所に対して提出された債権届出をどのように扱うか、債権届出に関する書類の閲覧のための備え置きはどうするか(破産法230条)などが問題になりうるところです。
以 上
関連事項
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住宅ローンと民事再生
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債権仮差押え
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