米川耕一法律事務所

死にたい気持ち

 死にたい気持ち 118号
  
 代表弁護士 米川耕一 平成17年2月17日

1.今回(118号)は、「死にたい気持ち」です。

 不治の病、金欠、破産、介護、失恋、親子・夫婦の葛藤、この世には、よくもこれほどと思うくらい不幸の原因は沢山用意されています。絶望から、自殺したりする人の気持ちも分からなくはありません。なぜ、こんなに苦労をしてまで、私達は生きなければならないのだろうか。

 宗教家は、自殺すると取り返しのつかないこととなり、地獄へ堕ちると言いいますが、実感は湧かないでしょう。地獄へ行ったらそれまでよ、と考える人もいるでしょう。他方、人生は修行の場と言われても、本当に苦しい時は、そんな聖人君子のような言葉は耳に入りません。

2.でも、一つ考えてみてほしい。死にたくなるのは、貧困などの「現状」と豊かな生活などの「理想」をあなたが比較した結果です。この比較は、知らず知らずのうちに行われていますが、この比較がなければ、絶望という気持ちは起きないのです。どんなときでも人間は「夢見る人」なのです。

3.この点に気づくことに、光があります。救われる道の端緒があります。

 「理想」は、人間にとって必須のものですが、理想を持つことがあなたを苦しめているのだとしたら、あなたが現在いだいている「理想」の基準や質を、しばし、少し落としてみよう。その結果、「絶望」が「ちょっと不便なこと」に変わって行くことでしょう。

4.貧困にあえいでいたら、今日の理想の夕食は、家族で一匹のお魚を食べることにしてみよう。介護で苦しんでいたら微かに窺える親の安心した表情を見いだすことを理想としよう。失恋したら、「恋愛の対象は、個人ではなく、類である。」という真理に思いを馳せてみよう。関節の痛みに苦しんでいたら、手の平をみてごらん。ジッとみていると、いつも黙々と、私と一緒に頑張ってくれているねという気持ちになるでしょう。お風呂に入ったら、足をジッとみよう。「今日一日、ありがとね。こんな私の為に頑張ってくれて本当にありがとう。」と。無口な足への感謝から、自然に涙が出てくるかもしれません。

 一歩ずつ、あせらず、ゆったり、努力しよう。そして、あなたの気持ちが穏やかになってきたら、いったん下げた理想を徐々に上げてゆけばよいのです。あせらず、ゆっくりと。

     以 上