代表弁護士米川耕一 2001年10月26日
1. 今回は、「秘すれば花」です。世阿弥の「風姿花伝」(「花伝書」)に「秘すれば花なり。秘せずば花なるべからず。」との有名な言葉があります。これは芸道においては、観客が予想もできないような芸を持ち、これは演ずるならば大きな効用があるということですが、この心構えは経営方法においても言えることです。
2. あるメキシコ料理店に行ったときのことですが、メキシコから来ていたウエイトレスが客の注文をメモもとらずに100%正確に取り次いでいました。
そのようなパフォーマンスは私には初めての経験でしたので驚くとともに、同行したお客様を取り巻く雰囲気もとても盛り上がり、数日後に同じ店に行きました。
3. ところが、2回目に同じウエイトレスのパフォーマンスを見ても感動は薄れていました。
世阿弥も言っていることですが、それは、観客の心の準備が出来てしまっているので感動を呼ばなくなってしまったからです。
加えて、世阿弥は、秘するものを持っていること自体知られてはならないと言っています。
4. 一つのものの意外性は長く続かないわけですから、経営者は常に研鑽を怠ることなく、「秘するもの」を十分に用意し企業の新鮮さを持続する義務があるわけです。
このことは大企業では日常茶飯事に検討されていることですが、中小企業ではなにかで売上が上がると舞い上がってしまい、研鑽を怠り、しばらくすると業績が急降下してしまうことが大変多いのです。
5.これを別の角度から見てみると、経営がうまくいっている時期は「陽」であるわけですが、以前にも述べましたように「陽」の時期には実は密かに「陰」が進行し始めているわけです。
「陰」が表面化しないうちに次の「陽」を考えなければならいというわけです。
6.「秘するもの」をできるだけ多く持つようにするにはどうしたらよいでしょうか。
一つの秘訣は「観察すること」です。五感を使って毎日出会う出来事をよく観ることです。
繁盛している店に行ったら、この不景気のときになぜその店だけにお客が押し寄せているかを観察します。
味はどうか、サービスはどうか、商品の品質はどうか、その場にいる顧客はどのようなことを話しているか、加えて、繁盛している店を複数観て共通点を考えます。
このようなことにヒントが沢山隠されているのです。
観察したら自分の会社や店と比較します。なにが足りないかが分かってきます。
7.余談ですが、「観察すること」を心掛けていると他の効用も身につけることが出来ます。
それは、感覚が研ぎ澄まされる結果、取引先の異常事態や従業員の不調などもいち早くキャッチできるようになり、早期に対策を立てられるようになり、その面からも経営の安定を図れるようになるということなのです。
以 上
Copyright © 1999-2001 yonekawa koichi , all rights reserved.
秘すれば花