米川耕一法律事務所
けじめ 

弁護士米川耕一 2001年11月2日

1. 今回は、「けじめ」です。人事そのほかの面で「和」を大切にするあまり、「けじめ」を忘れてしまっている経営者の方が少なくありません。


2. ギャンブルでサラ金に手を出し、にっちもさっちも行かなくなった従業員に泣きつかれ、お金を融通して整理してあげたところ、再びその従業員がサラ金に手を出したとか、解雇が正当であるのに変に温情をかけ解雇せず、その後不祥事が続いても解雇しにくくなってしまった例など、経営者の態度として首を傾げたくなるような例を私は見てきました。


3.人間の心に傾向性=ベクトルがあることは以前に述べたとおりですが、よほど悟った人でない限り、人間は放っておくと安易に流れてしまうのですから、経営者としてはしめるべき所はしめなければなりません。
 中途半端な考えから「和」を実践しようとすると、会社が乱れきってしまい、手がつけられなくなってしまいます。
 その結果会社は破綻に向かい、最終的には、従業員全体にとって最も不幸な結果となってしまいます。
 つまり、経営の行き先を見通して、これを大局から見ることが必要で、特定の従業員に対して「けじめ」をつけることは、長い時間の流れから見て、大いなる善なのです。


4. それでは、前掲のふたつの例で経営者としてはどのように振る舞うべきだったのでしょうか。

(1)サラ金の例:利息制限法という法律に照らすとサラ金業者が不当に高利で弁済を受けていることがほとんどで、既に債務がなくなっていたり、逆に払いすぎということで返還をうけられる場合もあります。
 お金を出してあげるのではなく、反省をうながるために冷たく突き放すか、利息制限法があることを告げて弁護士会へ相談に行くことをすすめることが最善です。
 清算の資金を出すことは最悪です。

(2)解雇の例:正当な解雇理由があると判断したら即刻解雇すべきです。
 そのような従業員が給与をもらい続けることは他の誠実な従業員の志気を下げます。


5.そして、いずれの場合も、冷たく突き放したり、解雇することは会社の為のみならず、対象となったその従業員の為でもあると祈りながら行うことです。


6.最後に、性格的に優しく「けじめ」をつけることが不得手な経営者の方は、不得手なことを敢えてやることで経営者としての勉強させてもらっていると考えればよいのです。


              以 上


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