2001年11月13日代表弁護士 米川 耕一
1. 今回は、「気持ちを込める」です。例えばフランス料理の評論で「同じ皿でも馴染み客の皿の方が美味しい。」というコメントを見かけることがあります。
店側の気合いの入れ方が違うというわけです。
馴染み客を大事にし、その人に美味しいものを食べてもらいたいというのは自然な人情であり、それが静かな気合いとなっているわけです。
2. また、生け花に「きれいに咲こうね。」と愛情を込めて語りかけて生けると、その花は格段に生き生きとしてきます。
3.つまり、気持ちを込めた場合は、同じような事物であっても、良い品質に結果してしまうわけです。
このようなことが分かってから、私は、例えば、挨拶状を出すときは「これで御縁が広がりますように。」、和解交渉をするときは「双方にとってベストの和解が出来ますように。」と自分の気持ちを葉書あるいは想像上の交渉の場に込めています。
もとより科学的に厳密な証明はできませんが、気持ちをこめた挨拶状によってクライアントがより広がったり、思わず円満な和解ができてしまったりなどということが起きています。
4.このように単なる物質と思われているものの性質に人間の心の持ち様が精妙な影響を与えますし、出来事にすら心が影響を与えます。
中国の古典「中庸」や「大学」には誠意を尽くすことが万物を育成することになるという根元的な思想が記されていますが、まさにこのようなことを言っているのでしょう。
5.さて、このような視点から会社経営について考えてみましょう。
ほとんどの企業は「お客様は神様です。」といった趣旨のスローガンを掲げていますが、スローガンどおりの気持ちを込めて顧客に接しないとスローガンは次第に何の効果も発揮しなくなって行きます。
特に、経営状態がよいと、現状に安住したいという気持ちが芽生え、そのような立派なスローガンに気持ちがこもらなくなってしまい、そのうちに状態が悪くなってしまいます。
皮肉なことに、経営状態があまり良くないときの方が必死になって製造・販売・営業などにあたる結果、スローガンに気持ちがこもると言い得ます。
6.経営者としては、どのような状態にあっても常に気持ちを込める努力を怠ってはならず、そのための工夫をしなければなりません。
7.具体的には、決して現状に安住してはならず、リスクを承知で、常に事業の拡大、新規案件の検討といった挑戦する姿勢を貫かなければなりません。
事情の拡大、新規案件の開始は当然に数々の難問や緊張を経営者に突きつけるわけですから、結果として、一番気持ちがこもるようになり、長期的視野に立った場合、必ずやよい結果を得ることが出来るようになるのです。 以 上
(次)
Copyright © 1999-2001 yonekawa koichi , all rights reserved.
気持ちを込める