2003年7月8日 代表弁護士 米川 耕一
今、私の横に置かれたステレオからはベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲(トスカニーニ指揮、ハイフェッツ=ヴァイオリン独奏)の第1楽章が流れています。
何と美しく、何と力強く、何と人間精神の気高さを歌い上げた演奏でしょうか。
ベートーヴェンは、音楽家でありながら、若くして聴覚を失うという絶望の果て、ハイリゲンシュタットの遺書を書きましたが、己を神に投入し、「自分は芸術の為に生きる!」と高らかに宣言し、数々の名曲を作り続けました。
会社発展の方策65で書きましたように、今年に入ってから、私は、複数の人間が織りなす一連の無意識の力の激突を解決する課題に取りかかるようになり、その結果、並の精神力では持ちこたえ難い未知の心理学の領域に踏み込んでしまいました。
進めば進むほど新しい問題を突きつけられ、さすがの私も、時折、無意識の世界に渦巻く厖大なエネルギーにたじろぐ時があります。
この問題に直面するまでは、ブルックナーの交響曲7番などを聞きながらリラックスした生活を楽しんでいましたが、おそらくは自分の深いところにあるベートーヴェン精神がそのような安穏とした生活を許さなかったのでしょう。
今、演奏は第2楽章に入りました。
リラックスし、しばしの憩いです。
天上の美しさ。
世間のことを忘れ去る美しさ。
しかし、安定しきって、何もすることがない不幸、喪失感よりも未知の領域での苦しい闘いを喜ぶべきか?
演奏は第3楽章に入りました。
「前進、前進」と曲は訴える。
流れる美しさ。
繊細さと力強さ。
アニマ、アニムスの織りなす美しさとその統合。
常に上昇する力。
全ての不安、恐怖を振りほどき、神に近づこうとするベートーヴェン。
そして、カデンツァから究極の勝利へ。
私の内なるパワーを全開する演奏でした。
有り難うベートーヴェン!
ベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲のCDのうち、私の最も好きな演奏を聴きながら心に浮かんだことをそのまま書きました。
この演奏と本稿を未だ、病癒えぬ人へ。
以 上
(次)
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