97号 NEW!
2004年2月24日 代表弁護士 米川 耕一
1.今回(97号)は、「離婚は心を豊かにする。」です。
私は、26年間にわたり、離婚案件を多数取り扱ってきました。
ストレスに押しつぶされそうになりながら離婚交渉をする方々は、即ち、不幸、他方、楽しそうな結婚生活を続けている方々は、即ち、幸福と思いこんできました。
しかし、あることをきっかけとして、私の、そして、社会一般のこの考え方は必ずしも正しくないということに気付きました。
この気づきは私にとって天地がひっくり返るほど衝撃的でした。
2.不満のない結婚生活は確かに楽しいでしょう。
しかし、そのような問題のない生活が長年続いてしまうと、人生の問題、特に人間関係の問題を解決しようとする意欲、能力が減退してしまいます。
丁度、使わない筋肉や脳が衰えてしまうことに似ています。
加えて、夫婦は何となく二人で同居しているという同居人の関係になってゆきます。
愛はあるでしょうが潜在化してゆきます。
つまり、死や病気といった極端な状況にならないとパートナーに対する愛を意識することがなくなって行きます。
一方、離婚問題の最中にある場合、確かにストレスは大きいのですが、否が応でも、問題解決を必死で考えざるを得ないようになり、脳はフル回転しています。
そして、結婚したばかりの頃、二人は愛に溢れていた、愛に包まれていたことを想起します。
過去を振り返ることにより愛を顕在的に意識するようになるわけです。
3.さらに進んで、離婚問題につきものの「不倫」について考えてみましょう。
私は「不倫」を「大航海」「大冒険」と称しています。
大航海の当事者は、恋人と家庭(妻、子供)との板挟みになります。
妻に対する自分の気持ちはなんだったのだろう、愛とはなんだろうと考えます。
また、恋人に対する誠意は妻に対する不誠実となるという矛盾を通じて誠意を貫くことの難しさを実感します。
つまり、愛や誠意の本質について当事者は必死になって考察を進めるのです。
このような体験、深い洞察は円満な結婚を送っていたのではあり得ないことです。
4.悩み、そして、考え抜くことは人間を大きく深化させます。
現在、離婚問題などで悩んでおられる方、心配はいりません。
その問題が御自身のこれからの人生を必ず実り多いものにしてくれると信じて、大いに考え抜いてみてください。
以 上
(次)
Copyright © 1999-2004 koichi yonekawa , all rights reserved.