財産分与

 財産分与に関する民事保全
夫が財産を隠している
  
弁護士 小出剛司 2005年1月11日
 協議離婚であれ、裁判上の離婚であれ、夫婦が離婚する多くの場合、財産分与(民法第768条、771条)が問題になります。
通常は、妻の側から夫に対して、財産の約半分を分与せよという主張がなされることが多いでしょう。相手が管理する財産をどう把握するのかについてはこちらを参照して下さい。

 では、近い将来離婚することが見込まれる場合、夫が不自然な程に預金口座を複数持っていたり、知らぬ間に大きな買い物をするなどして財産を隠そうとしている場合、何か法律上の手段を用いて夫の財産隠しを防止することはできるのでしょうか?夫に対し法律上財産分与をいくら程度請求できるか見通しがついていても、調停や裁判で決着がつくまでに夫が将来財産分与で妻に渡すべき財産を浪費・隠匿してしまったらせっかく得た和解条項や判決もただの紙切れになってしまう場合があるのです。真実、財産を浪費してしまっていたのなら「無いものは払えない」です。

 この場合、民事保全手続きを用いて、離婚調停前に、離婚裁判で決着が付くまで相手方の責任財産(差し押さえの対象となる財産のことです。)のうちの特定の財産を処分することを禁ずることが出来る場合があります。

 この裁判所の命令を「仮差押え命令」と言います。
この手続きは、実際に離婚調停が始まる前に、相手方の財産の隠匿・消費を防止する手段である点に特徴があります。

 例えば、夫が所有する土地を離婚を予定して夫が売りに出すなりして浪費しやすい現金に換えようとしている場合、土地の対して仮差押え命令を得ることで夫は土地を売りに出すことができなくなるのです。こうすれば、少なくとも仮差押え命令を得た土地については、財産分与を行使する場合に強制執行の対象として確保することができます。

 では、どのような場合に民事保全手続きを用いることができるのでしょうか。
 
 民事保全手続きは、裁判での決着を待たずに、相手方の持っている特定の財産の処分権を制限することができるという手続ですので、以下のような要件が定められています。

 まず、(1)離婚原因があることが必要です。すなわち、仮に裁判になった場合判決で離婚が認められる場合でなればなりません。離婚した場合の財産分与請求権を確保する為の手続きですから、当然のことです。

 そして、(2)保全手続きを要する客観的な理由が必要です。例えば、相手方が必要も無いのに不自然な程通帳を沢山持っていることが複数の預金通帳のコピーで明かになるなど、財産隠しを行っていると認められる客観的な理由が必要です。

 さらに(3)担保が必要となります(裁判所に納めるもので、離婚決着後戻ってきます。額はケースバイケースです。)
 但し、以上はあくまで一般論であって、上の例のように土地を仮に差押える場合と動産や債権を仮に差押える場合とでは要件が大きくことなります。

 一般的には、動産や債権を仮に差押える場合には、(2)保全手続きを要する客観的な理由はより高度のものが要求されますし、(3)担保額も高額になります。

 詳細はご相談ください。

以 上
関連情報
 できるだけ多くの財産分与
 結婚論
Copyright © 2005 Koide Tsuyoshi, all rights reserved.