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弁護士 鈴木謙吾 2002年8月8日
行政文書に関する開示手続があります。
当該行政庁に連絡すれば、行政文書開示請求書の定型書式を送付してくれるなど丁寧に対応してくれますので、記載例に沿って記入すれば比較的簡単に開示請求はできるでしょう。
しかし、何らかの理由で(具体的にはプライバシーを理由にする場合が多いようです。)行政文書不開示決定をされてしまった場合には、どのような方法で不服を申し立てるべきでしょうか。
第1として、裁判所に対して、行政訴訟を提起する方法があります。
しかし、行政訴訟においては、当該行政処分が違法か否かを判断し、当不当の判断までしないことに注意が必要です。
第2として、行政庁に対して、行政不服申立をする方法があります。
この方法であれば、当該行政処分の違法性のみならず当不当の判断もされますが、行政庁内部の手続なので公平性・中立性に欠ける面は否めません。
第2の行政不服申立には、@審査請求、A異議申立、B再審査請求の3種類の手続があります。
@審査請求とは、当該行政処分をした行政庁以外の行政庁に対する不服申立であり、A異議申立とは、当該行政処分をした行政庁に対してする不服申立であり、B再審査請求とは、審査請求の裁決に不服がある場合に審査庁の上級庁に対してする不服申立のことです。
審査請求が原則的な形態であり、異議申立は例外的なものとされています(行政不服審査法5条及び48条)。
また、再審査請求は、原則として法律に再審査請求できる旨の定めがある場合に限るとされています(同法8条1項、2項)。
このように審査請求が原則的な形態とされていますので、以下審査請求に関してポイントとなる点を説明します。
まず、審査請求の場合、審査請求書を審査庁に提出するのが原則とされています。
但し、処分庁を経由して提出することもでき(17条1項)、その場合には処分庁は直ちに審査請求書の正本を審査庁に送付しなければならない(17条2項)とされています。
審査請求書は、郵送により提出することもできますが(14条4項)、審査請求書を持参する場合には、審査庁又は処分庁が収受した日が提起日となり、郵送の場合には、郵便局の受付日を提起日として期間計算することになります。
なお、処分庁経由で審査請求書を提出したときは、審査請求期間の計算(14条)においては、処分庁に審査請求書を提出したときに、審査庁に対して審査請求があったものとみなされることになります(17条3項)。
また、審査請求書に記載することが要求されている法定記載事項として、15条が参考になります。
法定記載事項の記載が不十分な場合には補正が命じられることもあります。
補正を命じられた期間内に適正な補正がされた場合には、その審査請求は初めから適法にされたものとして、内容の審査手続を開始することになります。
さらに、審査請求をする際に注意する事項として、行政処分について審査請求できる者が限定されている点があげられます。
具体的には、最判昭和53・3・14により、「行政処分に不服がある者であり、違法又は不当な処分により自己の権利若しくは利益を侵害され、又は必然的に侵害されるおそれのある者」でなければならないとされています。
最後に、行政不服審査制度の円滑な活用を図るために、行政庁が不服申立ができる処分を書面でするときは、@当該処分に対し不服申立をすることができること、A不服申立をすべき行政庁、B不服申立ができる期間を処分の相手方に教示しなければならないとされています(57条1項)。
ただし、同条は訓示規定なので、教示の懈怠や誤りがあっても当然には違法にはなりません。
もちろん58条に救済手続はあります。
以上のような大まかな流れで行政不服審査請求手続が規定されています。
同請求に対する回答については、審査する行政庁やその内容にもよりますが、少なくとも数か月はかかる場合が多いようです。
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