抵当権消滅請求    

  弁護士櫻井滋規 2003年11月20日

 今度の民法改正では、「滌除」制度が「抵当権消滅請求」という制度にかわることになりました(公布日−平成15年8月1日 施行日−公布の日から起算して1年以内の政令で定める日)。


 これまで、滌除制度は、ハンコ代等を求める後順位抵当権者を廃除するためなどに有効に利用されてきましたが、一方で制度内容として抵当権者に増加競売や買取義務などが課せられている上、そもそも抵当権実行の際にも滌除権者へ権利保障のため抵当権実行通知義務があるなど、滌除制度は抵当権者に大きな負担となっていました。


 現実にも、そこを狙って抵当権妨害の手段としても、利用されることも多く、いわゆる滌除屋の存在が問題視されていました。


 そこで、滌除制度を改善し、新たに導入されたのが、「抵当権消滅請求」制度です。


 従来の「滌除」制度と比較した「抵当権消滅請求」制度の内容は、以下のとおりです。


@ 主体の限定
  滌除制度では、地上権者、永小作権者も請求権者となっていましたが、抵当権消滅請求制度では、請求権者は、所有権者のみに限定されました。


A 増加競売・増加買取義務の廃止
  滌除制度では、抵当権者が滌除の申出を断る場合、増加競売を申立てる必要があり、1割増で競落する人がいない場合、自分が買受人にならなければなりませんでした。

 抵当権消滅請求制度では、抵当権者は、第三取得者から抵当権消滅請求がなされた場合、普通の競売を申し立てればよく、競落してくれる人がいなくても、自分で不動産を買取らなくても良いということになりました。

  抵当権消滅請求制度では、競落してくれる人がいない場合、抵当権消滅の金額を調整の上、再度抵当権消滅請求(抵当権消滅請求→普通の競売)が繰り返されることになります。


B 競売申立時期の見直し
  滌除制度では、抵当権者は、第三取得者から滌除の申出を受けた場合、1ヶ月以内に競売の申立をしないと承諾したものとみなされていました。

 抵当権消滅請求制度では、上記期間が2カ月の期間となりました。

 これによって、抵当権者は、抵当不動産の時価等の価格、落札の見通分析などをより調査でき、抵当権消滅請求を承諾するか、拒絶して競売の申立を判断することができます。


C  抵当権実行通知の廃止
   滌除制度では、第三取得者に、滌除権行使の機会を保障するため、抵当権者が抵当権を実行する場合には、実行する旨の通知を第三取得者に行うものとされ、通知後1か月待って抵当権の実行を申し立てることになっていました。

 抵当権消滅制度では、抵当権実行手続きが遅らせないように、この抵当権実行通知は廃止されました。


 以上のように、抵当権消滅制度では、制度内容について、請求権者を限定し、抵当権者の義務の軽減化を図り、手続保障をやや後退させることで、抵当権者側に配慮された内容となっています。








                        以 上


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