弁護士会照会と患者情報
患者情報保護
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弁護士 永島賢也 2005年7月8日
Q 弁護士会からの患者の診療内容について照会がなされたとき、これに対して報告しても個人情報保護法違反とはならないのでしょうか?
A ならないと考えます。ただし、注意が必要な点があります。
個人情報保護法は、個人情報取扱事業者は、次に掲げる場合を除くほか、あらかじめ本人の同意を得ないで、個人データを第三者に提供してはならないと定めています(同法23条1項)。
診療録は、個人データに該当しますので、病院(医療法人)が、患者の診療録の内容について、弁護士会からの照会に応じることは、この第三者提供に該当し、あらかじめ、患者本人の同意が必要になるようにも見えます。
しかしながら、「次に掲げる場合を除くほか、」と定めているとおり、除外例があります。それが、「法令に基づく場合」です(同法23条1項1号)。つまり、法令に基づく場合には、本人の同意がなくとも、第三者に提供することが認められています。
弁護士は、受任している事件について、所属弁護士会に対し、公務所又は公私の団体に照会して必要な事項の報告を求めることができます(
弁護士法第23条の2
)。弁護士会は、その申出が適当でないと認めるときは、その弁護士の申出を拒絶することもできますが、そうでない場合は、弁護士会は、その申出に基づいて、公務所又は公私の団体に照会して必要な事項の報告を求めることができます。
そうだとすると、弁護士会からの照会がなされた場合、弁護士法第23条の2という法令に基づく場合に該当するので、患者本人の同意は必要でないと考えられます。もちろん、目的外利用としても本人の同意は不要なものです(個人情報保護法16条3項1号)。
ただし、具体的な報告内容によっては、今度は本人から、プライバシー権の侵害などを理由に損害賠償請求がなされるおそれもありますので、個別の事項ごとに判断する必要があります。すなわち、報告は、その照会の理由に鑑み、必要な事項にとどめることが重要と考えます。
ちなみに、昭和56年4月14日最高裁判決は、弁護士法23条の2に基づく照会に応じて報告する場合でも、違法になるケースがあることを物語っています。このケースは、市町村長が弁護士会の照会に漫然と応じ、ある人物の前科等を報告したことを違法と判断した例です。もっとも、反対意見が付されています。
以 上
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