個人情報の秘密
個人情報の秘密
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弁護士 永島賢也 2005年8月23日
業
務用の契約書の中には、秘密を守るという趣旨の守秘義務条項がしばしば定められております。
例えば、次のようなものです。
甲及び乙は、それぞれ相手方より秘密と明示して提供された情報(以下「秘密情報」という。)につき、厳重に管理するものとし、第三者に漏洩等してはならない。
ただし、次の各号のいずれか一つに該当する情報についてはこの限りでない。
(1)提供を受ける以前に、既に保有していた情報
(2)提供を受ける以前に、既に公知となった情報
(3)相手方から提供を受けた情報によらず、独自に開発取得した情報
(4)正当な権限を有する第三者から守秘義務を負うことなく適法に入手した情報
(5)相手方から秘密と明示されずに提供された情報
と
ころで、特許法には、公然知られた発明や公然実施された発明などは特許要件を充たさず、特許を受けることができない旨が定められています(特許法29条)。
この「公然」という法律用語は、秘密の範囲を脱したことを意味します。
つまり、きわめて少数の者しか知らなかったとしても、その者らが秘密を保つ義務を負っていないのであれば、「公然」に該当します。
逆に、多数の者が知っていても、その者ら全員が秘密を保つ義務を負っている場合は、「公然」には該当しません。
つまり、守秘義務の範囲が重要となります。
他
方、個人情報取扱事業者が、その業務の委託先との間で個人情報の安全管理に関する書面を交わすことがあり(個人情報保護法22条)、その条項には、上記と同様の守秘義務条項が含まれることがあります。
問
題は、個人情報の保護という観点からみると、たとえ、その本人の氏名や住所などが既に一般に知られていたとしても(秘密の範囲を脱していたとしても)、漏洩等されないように安全に管理しなければならないという点です。
個人情報の保護は、本人が、自分にかかわる情報をコントロールするという権利利益を保護しようとする背景を持っていますので、端的にある情報を秘密にするということとは観点を異にするのです。
とすると、個人情報については、それが公然に知られていたとしても、利用目的の達成に必要な範囲を超えて利用してはならないし、第三者に提供してもいけないことになります。
また、偽りその他不正の手段によって取得してもいけないのです。
委託業者との間で個人情報の取り扱いに関する書面を交わす際、守秘義務契約の内容には注意しましょう。
以 上
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